対局後の検討で表示される「評価値」と「勝率バー」は、AIがその局面をどう見ているかを知るための手がかりです。ただし、評価値そのものが勝率ではなく、勝率バーも対局結果を集計した数字ではありません。

この記事では、まず将棋AIの検討画面で一般的にどう読むものなのかを説明し、そのあとにおすし将棋ではどの向きで、どの式で、どのように表示しているかをまとめます。

勝率バーは、評価値から計算した形勢の目安です。あなたが実際にその確率で勝てるという保証ではありません。

一般的な評価値の見方

一般的に、将棋AIの評価値は、AIが局面を探索して「どちらがどれくらい指しやすいか」を数値化したものです。駒得、玉の安全度、攻めの速さ、詰みの可能性などを総合して、局面の良し悪しをひとつの数字として返します。

評価値は「勝率そのもの」ではありません。たとえば評価値+500を「勝率500%」とは読みません。多くの検討画面では、評価値が大きくなるほど片方が有利、小さくなるほどもう片方が有利、0付近なら互角に近い、という形で読みます。

ただし、どちら側から見た数値として表示するかはソフトや画面設計によって変わります。 先手視点でそろえる画面もあれば、手番側や自分側を基準に見せる画面もあります。検討するときは、まず「プラスが誰にとって良いのか」を確認するのが大事です。

一般的な勝率バーの考え方

勝率バーは、評価値を人間が直感的に読みやすい割合へ置き換えた表示です。バーが長い側ほど、その局面をAIが有利と見ている、と考えます。

この割合は、実際の対局成績をその場で集計したものではありません。評価値を何らかの式やモデルで0〜100%に変換したものです。よく使われる考え方は、評価値0を50%付近に置き、評価値が大きくなるほど100%へ、小さくなるほど0%へ近づける方法です。

変換方法はソフトごとに違います。同じ評価値+1000でも、ある画面では75%付近、別の画面では80%付近に見えることがあります。勝率バーは「実力差を含めた自分の勝ちやすさ」ではなく、「その評価値をその画面のルールで割合表示したもの」と見るのが自然です。

おすし将棋の評価値表示

おすし将棋の検討画面では、評価値を先手視点にそろえて表示します。手番や自分の先後にかかわらず、プラスなら先手寄り、マイナスなら後手寄りです。

評価値の符号と有利な側
評価値 読み方
プラス(例:+500) 先手が有利と見ている
0付近 両者の形勢が近いと見ている
マイナス(例:-500) 後手が有利と見ている

たとえば評価値が +1000 なら、先手が大きく有利と見ている局面です。自分が後手なら、相手が有利な局面として読みます。

自分が後手のときは、マイナスが自分にとってよい評価です。 たとえば+200から-500への変化は、先手には悪化、後手には改善です。小さな差があっても、表示上の形勢は「互角」になることがあります。

「注目の局面」にある評価値の変化だけは、指した側の視点で表示します。詳細の「先手視点」「後手視点」という表記も確認してください。

おすし将棋の勝率バー

おすし将棋の勝率バーは、左の青が後手、右のオレンジが先手です。自分が先手か後手かによって左右が入れ替わることはありません。「形勢グラフ」と「読み筋」の両方に、選択している棋譜の局面に対応するバーが表示されます。

それぞれの側には、整数の百分率と「互角」「優勢」などの言葉が付きます。バーが長い側ほど、AIの評価がその側に寄っています。

評価値 0

後手 50%先手 50%

評価値 +500

後手 34%先手 66%

評価値 -1000

後手 79%先手 21%
左の青が後手、右のオレンジが先手。評価値はすべて先手視点です。

おすし将棋では、先手視点の評価値を s として、次の式で勝率バーの割合を求めています。

先手の割合(%)= 100 / (1 + exp(-s / 750))
        後手の割合(%)= 100 - 先手の割合
        

exp は指数関数です。この変換は「シグモイド関数」と呼ばれ、評価値0で50%、プラスなら50%より上、マイナスなら50%より下になります。評価値が大きくなるにつれて、割合はゆっくり100%に近づきます。

バーの幅には小数を含む計算結果を使います。数字の表示は先手側を四捨五入し、後手側を「100 − 先手の表示値」で求めるため、表示の合計は必ず100%です。

評価値と画面表示の対応表

以下は、詰みの情報がない通常の評価値を変換した結果です。百分率と形勢の言葉は、実際の画面と同じ丸め方で示しています。

係数750による評価値と表示割合の対応
評価値(先手視点) 後手(左) 先手(右) 先手の形勢表示
-3000 98% 2% 負勢
-2000 94% 6% 負勢
-1000 79% 21% 大劣勢
-500 66% 34% 劣勢
-300 60% 40% 劣勢
0 50% 50% 互角
+300 40% 60% 優勢
+500 34% 66% 優勢
+1000 21% 79% 大優勢
+1500 12% 88% 大優勢
+2000 6% 94% 勝勢
+3000 2% 98% 勝勢

同じ500点の差でも、割合の変化は一定ではありません。0から+500なら先手50%から66%、+2000から+2500なら先手94%から97%です。接戦の局面ほど、評価値の変化がバーの長さに表れやすくなっています。

係数750について

式の中の750は、評価値に対してバーをどの程度動かすかを決める、おすし将棋の表示設定です。同じ評価値でも、この係数が小さいほど50%から離れやすく、大きいほど50%に近くなります。

採用の参考となる山岡忠夫氏の調査では、elmoの教師データから評価値と勝敗の関係を調べ、約754.3、追記の再測定で約756.1という係数が報告されています。これは特定のデータでの測定値です。山岡忠夫「将棋でディープラーニングする その22(評価値と勝率の関係)」

同氏の後の調査でも、対象の棋譜や生成条件によって係数が変わることが示されています。そのため、本サイトの750を、あらゆるAIや人間同士の対局に共通する正確な勝率換算と捉えないでください。山岡忠夫「将棋AI実験ノート:自己対局の評価値の補正」

おすし将棋の形勢ラベル

おすし将棋では、バーに添える「互角」「優勢」「勝勢」などの言葉を、それぞれの側に表示する丸めた後の百分率で決めています。先手・後手ともに同じ基準です。

丸めた表示割合と形勢の言葉
その側の表示割合 形勢表示
90〜100% 勝勢
75〜89% 大優勢
60〜74% 優勢
41〜59% 互角
26〜40% 劣勢
11〜25% 大劣勢
0〜10% 負勢

たとえば先手60%なら先手は「優勢」、後手40%なら後手は「劣勢」です。境界付近では、わずかな評価値の変化でも言葉が切り替わります。

詰み・100%・未解析の表示

ここからは、おすし将棋の検討画面で起こる例外的な表示です。一般的な評価値の読み方と少し違うところがあるので、数字だけで判断しないようにしてください。

詰みの情報があるとき

AIから詰みの情報が返った場合は、通常の評価値の代わりに「先手3手詰」「後手5手詰」などと表示します。「先手3手詰」は先手が後手玉を3手で詰ますという解析結果です。

このときは変換式を使わず、先手が詰ます解析結果なら先手100%・後手0%、後手が詰ます解析結果なら後手100%・先手0%にします。形勢グラフでは詰ます側の端に線を寄せます。

100%だけで詰みとは判断しない

通常の評価値でも、四捨五入によって100%と表示されることがあります。たとえば+4000は計算上約99.52%なので、表示は先手100%・後手0%です。

100%という数字だけでは、詰みの検出や対局の終了を意味しません。 詰みの情報があるかどうかは、評価値欄の「先手○手詰」「後手○手詰」という表示で確認してください。

未解析のとき

選択した局面の解析結果がない間は、バーを半分ずつにし、数字を「–」、形勢の言葉を空欄にします。この半々のバーは、互角と判定したことを意味しません。

棋譜を持って検討画面を開くと、保存済みの解析があれば読み込み、なければ自動で全体解析を行います。読み込みや解析が完了しているかも確認してください。

形勢グラフと検討での使い方

勝率バーは選択中の局面、形勢グラフは棋譜全体の変化を見るための表示です。グラフは横軸が手数、縦軸が先手視点の評価値で、上が先手寄り、下が後手寄りです。クリックやドラッグで見たい手へ移動できます。

縦軸の目盛りは、選択中の手の前後3手に合わせて自動調整されます。最小の範囲は-1000〜+1000で、必要に応じて広がります。そのため、グラフの見た目の高さだけを比較せず、左の目盛りと評価値を一緒に読むのがポイントです。

詰みの情報や絶対値9000を超える評価値は、縦軸を広げる基準から外します。ただし、9000を超えたという理由だけで「○手詰」表示になるわけではありません。表示範囲を超えた通常の評価値は、グラフの上下端で描画されます。

  1. 自分が先手か後手かを確認し、自分側の割合を見ます。
  2. 形勢グラフで評価が大きく変わった手を選び、指す前と後の評価値を比べます。
  3. 「読み筋」や「注目の局面」でAIの推奨手と実戦の手を見比べ、どの応手で形勢が変わるのかを盤上で確認します。

たとえば自分が先手で、着手後に+500から-500へ変わったなら、自分の表示割合は66%から34%に下がっています。先手視点の評価値は1000点の悪化です。後手の着手で同じ変化が起きた場合は、後手にとって形勢が改善したことになります。

現在の全体解析は、NNUEエンジンを指定し、探索深さ10を要求しています。これは「必ず10手先まで完全に読めている」という意味ではありません。解析条件や読みの深さが変われば、評価も変わる可能性があります。

数字を見たら、その理由を読み筋で確かめてみてください。評価が変わった場面と具体的な指し手を結びつけると、次の対局で気をつける点が見つけやすくなります。

この記事の数式・表示基準は、2026年9月10日時点のおすし将棋の実装に基づきます。